買ったばかりの自転車を漕いで、両国へ続く住宅街を眺めていた。
今年はスカイツリーがオープンしてから5周年だそうだ。通勤中に都営浅草線の中吊り広告で見かけたので、何となく覚えていた。
連休も相まってか、観光客で溢れるソラマチを避け、タワービュー通りを抜け、博物館を越え。
その日は初夏と思えないほど、とても暑かった。
白いTシャツはとっくに汗でびしょ濡れになっていて、気付けば喉もカラカラに渇いている。
コンビニで水でも買ってくればよかったと後悔した。
人気のない真昼の住宅街では、時折思い出したかのように風がそよぐだけで、コンクリートから照り返される太陽の光が鈍い輝きを放っていた。
誰一人として路を歩いていない。
修理工場の倉庫、鄙びたスナック、パブ、小さすぎる公園。置きっぱなしのプランター。
近くでは工事をしているのか、微かな振動と、金属が鉱物を砕く音が聞こえ始めた。
ナンバーガールの曲みたいな風景だなあ、などとうっとりしながら、Tシャツの代えをどこで調達するかについて考えていた。
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